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湯川源泉:危ない温泉

初めに断っておくが、もうここを楽しむことは不可能になってしまったらしい。最後にここを訪れたのは、2002年の夏のことになる。

乗鞍高原に湯を引いている源泉施設が、山中深く誰の目にも晒されず存在している。その存在は古くから知られ、昭和初期の頃には湯の花採取のための湯畑があったという。湯量は豊富で、乗鞍高原にある100件ほどの宿がこの源泉を使用しているとのこと。空気に触れると透明感のある綺麗な白色に濁る湯は、草津ほどではないがPH3〜4の強酸性。レジオネラ菌も生息できないほど強く、金とプラチナ以外の貴金属は湯に浸けると一瞬で変色してしまう。

湯川源泉までは徒歩で3時間前後の行程となる。ゲートから1時間ほどは林道を歩くが、その後は荒れた山道に変わる。林道終点辺りで湯川源泉を仰ぎ見たのが、下の中央の写真。緑の禿げている場所が湯川源泉のある辺り。1時間も歩いた後だが、まだまだ遠く、しかもまだ尾根をいくつか越えなければ辿り着けない。

山道は不明瞭な箇所がいくつかあり、何度かロストしかけた。しかし荒れてはいるものの、関係者が利用するためなのだろうが、危険な箇所には丸太で橋が架けられており、最低限の手入れはされている様子が窺えた。尾根に上がったり谷に下りたりを繰り返すので、身体にはかなりきついものがある。

下の中央の写真は、行程終わり近くの最後の危険個所。一枚岩を削るのが不可能だったのか、急傾斜のまま心許ないロープが渡されているだけだ。このロープに体重を預ける気にはなれず、バランスを保つために利用するだけにとどめておいた。この岩の下は数メートル切れ落ちている。その下の薮の中で、がさがさと蠢くなにやら重量物が。姿は見えなかったが、その重量感から言ってニホンカモシカか熊のどちらかだろう。足を滑らせれば数メートル落下、下には待ちかまえているトラップ。まさに風雲たけし城。(古い?)

難関を越えればもう峠もなく、しばらく歩くと唐突に空がひらける。まるで楽園のような谷あいの広場が目の前に広がった。かつてはあちこちから噴気が立ち上げ地獄の様相を呈していたようだが、今はどこからも噴気はなく、本当にのどかで安らぐ桃源郷に変わっていた。

広大な広場の中央部に、岩で組まれた四段の湯溜めがあった。たっぷりと白い湯の花が堆積し、青白く輝いている。おそらく、湯の花採取に利用した湯畑の名残だと思われる。源泉温度が50度程度のため湯畑に溜まった湯はぬるく、入浴には適さない。しかし、縁に腰掛け眺めているだけでも幸せを感じた。

上の中央の写真は、源泉の取り出し口からオーバーフローして溜まった湯溜まり。ここの温度が丁度良く、小さいが最も気持ち良い。しかし、2002年の最後の訪問時には、この湯溜まりは綺麗さっぱりなくなっていた。もともとは湯畑に湯を流すためにあったのだと思うが、湯の花採取をしなくなった今では無駄に捨てているだけになっており、きっちり蓋をする対策を行ったのだろう。湯が供給されなくなった湯畑は、やがて干上がる事が予想された。

野湯というのは、本当に一期一会だ。

この場所で数時間、たっぷりと桃源郷を独り占めして味わったのだが、最後に付け加えておかねばなるまい。美しい自然には虫が付き物。ぶよのようなちんまい虫たちに大量にたかられ、身体のあちこちを齧られまくったのは、まあ毎度のことである。

「山道のあっち側 湯川源泉」に移転しました。

数年前、ここに行こうと考え役所に問い合わせしてみた方からの情報だが、一般者立ち入り禁止で湯舟も既にないと言われたそうだ。

2006年3月10日