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かもしか温泉:危ない温泉

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何を求めて温泉に行くのか?

癒し、療養、リフレッシュ。しかしなにより、これは旅全般に言えることなのだが、非日常感を追い求めてしまう。豊かな自然に陶酔し、柔らかな湯の中に手足を伸ばしながら、渓流の音と木の葉のざわめきに耳を傾ける。ところが、何度も出かけるうちに、かつて感動した景色は急に色褪せて見え始める。非日常が日常に取り込まれてしまうのだ。そして、新しい非日常を探し求め、より深みを追い始めることになる。

なんて、馬鹿をやる言い訳をしてみたりする。

さて、かもしか温泉への出発は、広い駐車場から始まる。駐車場の奥から続く、すがすがしい高原を貫く一本道を歩き始める。そのまま天空へ突き出して行きそうな爽快な遊歩道は平坦で、何時間でも歩いていられそうだ。季節は秋、ちょうどこの辺りの山腹まで紅葉が降りて来ている。つんと冷えた空気が、頬に気持ちいい。しかし遊歩道は、じっとりと汗ばみ始めた頃に唐突に終わりを告げる。地面は足元で切れ落ち、深い谷底へと落ち込んで行くのだ。

そこから、ガレた細い登山道を下り始めると、すぐに膝ががくがく笑い出す。帰りはここを登らなければいけないことを考えると、すぐに憂鬱になった。

数十メートル、急激に高度を下げると、やがて沢に突き当たり、ここで下りは終わる。沢を越えるとまた登り、すぐに平坦な道へ。看板が現れ、そこには「登山者の皆様へ、ロバの耳コースは落石のため危険につき通行を禁止します。」と脅しの文句が。いやなに、そんなことは事前調査で想定の範囲内さ。

やがて、コンクリの土台だけが残るかもしか温泉跡に出た。こんな車も通れない山中に旅館があったとは信じられないが、コンクリを使っているということはそれなりの近代に存在していたということか。目指す場所は、この旅館に湯を引いていたと思われる源泉地帯だ。

かもしか温泉跡を過ぎ暫く行くと、また沢に当たる。今度は橋もかかってないが、沢幅が狭いので対岸の岩に飛び移る。少し行くと眼前に切り立つ崖が立ちふさがり、上方では白い噴気が風にたなびいていた。

目の前のガレ場は急坂で、岩に「ロバ」とマーキング。ここがどうやらロバの耳コースらしい。完全に崩落しとるわ。

足を置くたびずるずると崩れる石にてこずりながら、それでも登り始めた。なんとか高度を稼ぐと、シュゴー!シュゴー!とすごい音で噴気が吹き出している源泉地帯に出た。これは、まさに「地獄」だ。

ブルーシートで作られた湯舟が噴気の中にあった。嬉しくなって、すぐに裸になり湯に浸かる。崖の中腹に有る湯舟からの景色は、これがまた絶品。風に煽られ噴気が冷たい霧となって、顔に当たる。いつまでもここにこうしていたい。でも、この噴気は、危険なのでは? もし、硫化水素の濃い部分を喰らったら、数分で死...?

我に返って上を見上げれば、今にも崩れ落ちてきそうな、せり出した崖のひさしが...。もし今、地震が起ったら、崩れる岩の下で平たくなれるに違いない。

そう、どんなに辛酸を舐め尽くし苦労して辿り着いたとしても、そこに長居は無用なのだ。それ程までに、野湯巡りは実が無い。正直、ホント馬鹿だと思うよ。

現場には30分もいなかった。帰りの登りでは、死ぬ思いだったことも言い添えておく。

「山道のあっち側 かもしか温泉」に移転しました。

【注意】

2000年の訪問です。現在では崩落がどの程度進んでいるかわかりません。

2006年1月23日