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「魔の山」谷川岳・一ノ倉沢:事件

1960年(昭和35年)、谷川岳一ノ倉沢、衝立岩正面壁で二名の登攀者が滑落、ザイルに宙づり状態になり遭難した。

当時の登攀技術も登攀具も現在のようにまだ発達しておらず、一ノ倉沢は日本でも指折りのトップクライマーしか挑戦を許されない、厳しい岩場だった。遭難したのは横浜蝸牛山岳会の二名。二人が宙づりになったのは逆層スラブがオーバーハングした地形部分。この岩場を最も知り尽くしたベテランクライマーが救助に向かい、遭難者の数メートルまで近づきながら、遭難者を降ろす術がなかった。この時点で、少なくとも一人にはまだ息があったという。

宙づりになった状態では、人間の身体は脆い。ザイルを身体に付ける(アンザイレン)方法はいくつかある。胸部に巻く方法、胴部に巻く方法、そして現在では腿と腰で支持するシットハーネス。最も安全とされ現在主流になりつつあるのが、シットハーネスと胸部の両方で支持する方法。シットハーネスだけでは、完全にコントロールされた墜落以外、生存可能性は著しく落ちるためだ。ましてや胸部だけ、あるいは胴部だけのアンザイレンでは、よほど小さな滑落か奇跡的な幸運にでも恵まれなければ助かる見込みは殆どなくなる。シットハーネスがヨーロッパで普及し始めたのがようやく1970年代からなので、シットハーネスでさえこの当時は当然のこと日本では使われていなかっただろう。

一刻を争う事態にも関わらず、為す術は無かった。やがて遭難者はエビのように身体を反り返らせたまま、全く動かなくなってしまった。ちなみに群馬県警は何故か知らないがヘリを持っていない。しかし、例えヘリがあっても救助できたかは疑問だ。

その後、何度も遺体を降ろそうと試みられたが、いずれも成功しなかった。両親も駆けつけ、報道のテレビカメラも現地に入った。テレビ、新聞でその痛ましい様が報道されたそうだ。確か数日間、遺体を降ろすことができずにいたと思う。ついには自衛隊が出動し、ライフルでザイルを撃ち切るという決断が下された。数千発の発砲音が谷あいにこだまし、やがて両親の目の前で、二人の遺体は谷に落ちて行った...。


谷川岳は、三国峠付近、群馬県と新潟県の県境にある。トマノ耳とオキノ耳と呼ばれる双耳峰で、今ではロープウエイを使って天神平まで上がり、そこから徒歩2時間程度で登頂することができる。標高は2000メートルに足らず、さほどの山とは思えない。しかし、多くの血を吸ってきた「魔の山」なのである。遭難死者累計数は世界的に見ても他の山の追随を許さない。それは、日本三大岩場のひとつである、一ノ倉沢の大岩壁を擁していることに起因する。東京から近いこともあって、かつて功名心に燃えた若者たちが初登攀を狙い、こぞっておしかけたのだ。

谷川岳ロープウエイの麓駅を通り過ぎ、細く曲がりくねった道をさらに奥に進んで行くと、やがてマチガ沢を過ぎる。この道は切り立った岸壁に囲まれ、冬は雪崩の巣となり閉鎖される。最後のコーナーを左に曲がると、いきなり眼前にそびえ立つ一ノ倉岳に圧倒される。車はここまで。一ノ倉沢には駐車場が用意されており、いつ行っても観光客の姿がある。ここでの景観は圧巻である。とても写真に写しとれるものではないし、千の言葉を尽くしても行った事のない者に伝えるのは難しいだろう。実際にその場に立ち一ノ倉岳を仰ぎ見ると、「魔の山」と呼ばれる理由が理解できる。険しさ厳しさの中に、人を魅了してやまない何かが、ここにはある。そして、この山に魅入られた700名を超える命が、この山に眠っているのだ。岩には多くのプレートが埋め込まれており、死んだ者の名が刻まれてあった。

駐車場には、意外に清潔なトイレがあった。車中泊場所としても充分使える。但し、多くの死者が眠るこの場所で夜を過ごす勇気があればの話だが。雪渓が夏でも残っているくらいなので、真夏でもかなり涼しい。

最後の写真は、一ノ倉岳の向かいにある白毛門。もう何度か一ノ倉沢に通ったが、これからもおそらく通い続けることになりそうだ。次は、こちらの白毛門の山頂から一ノ倉を撮りたいと思っている。

【道の駅情報】

道の駅 水上町水紀行館。インストラクターの元で高さ8mのロッククライミングを体験できる室内ロッククライミングホールがある。

【観光情報】

天神平で夏はトレッキング、冬はスキーを楽しめる。利根郡水上町谷川岳ロープウェイ駅〜同町一ノ倉沢間の291号線は11月下旬〜5月下旬まで閉鎖(積雪状況により変動あり)。冬季に一ノ倉沢まで行くには、土合から湯桧曽川沿いにスノートレックとなる。豪雪地域だけに、スノーシュー必須。雪崩に注意。水上町山岳ガイド協会主催でスノートレッキングツアーが行われるので、興味のある方は水上町観光協会のサイトを随時チェックして下さい。

2005年12月 8日