かなり昔の話になってしまうので、生憎、その店の名前も、場所もはっきり覚えていない。確か、米沢の街の中心近くではあったと思う。
仕事で、米沢に行った時のことだ。
仕事だろうが遊びだろうが、旅の楽しみのひとつは、やはり"食"だ。米沢といえば、誰が何と言おうと、米沢牛が代表だろう。ということで、仕事の用事ではあったものの、しっかりと下調べをしてから米沢入りをした。各地で有名な"食"があっても、店も選ばずに適当に入ってしまうと、なんだこんなものか、という「たいしたことないじゃん」感に後悔するものである。やはり、土地での有名な店を選ばないと、本当の味には出会えないだろう。
その店は、肉屋が経営する食事処だった。隣の店舗では普通に肉を売っている、外見からして本当に普通の肉屋だ。けちり過ぎて「たいしたことないじゃん」感に後悔するのも嫌だったので、ほどほどの1万円ちょっとのロースステーキを頼んだ。折しもバブル経済絶頂期の頃、東京で頼んだらこれでも数万円が羽を生やして飛んでってしまうとこだ。なんとも嬉しいほどリーズナボー!
わくわくしながら暫く待つと、やがてじゅ〜じゅ〜と鉄板の上でおいしそうな音を立てながら、そいつはやって来た。艶と照り、そして匂い。素晴らしきかな米沢牛。
鉄板と共に置かれたのは、一枚の紙切れ。見ると、コピーしたモノクロの牛の写真。そして説明書き。要は、この肉の素性を証明するもののようだ。何年生まれ、生産者誰それ、そして牛の名前だ。
「花子」
...そうか、このお肉は、花子の一部なのか。
ていうかさ、今から食おうとしてる肉の生前を知ってもなあ。
じゅ〜じゅ〜と音を立てている肉はとってもおいしそう...。いや、まあ、だから食ったさ。
ごめんよ〜!花子っ!!
ぱくっ。もぐもぐ。
じゅわっと、口の中で溶けた。噛む必要もないくらい柔らかい。濃厚な肉汁が、口いっぱいに広がる。これが米沢牛。旨いぞ、米沢牛。旨いぞ、花子。
花子は、堪能した私の血となり肉となった。花子の、ご冥福をお祈りいたします...。
米沢から最も近いのが、小野川温泉。そこから近い所に、間欠泉がそのまま湯舟になっている、広河原温泉がある。福島寄りに行くと、険しい山中にある滑川温泉と姥湯温泉が有名。
2005年11月19日
ネットでお申込なら最大4,500円割引!アクサダイレクトの自動車保険